
地球外知的生命体(ETI)は存在するのか?
Drake Equation (ドレイク方程式)

ドレイク博士とドレイク方程式
このあと現在までのSETIの方法と状況を書く前に、地球外知的生命体(文明)が銀河系にどれくらいの存在しているのかを推定する有名な式を紹介したいと思う。この式は、1961年にDrakeによって考案された。銀河系にある文明の数をNとするとそれはたった5つの変数で表される。
N=A×B×C×D×E×F
A:銀河系の年齢をとおして毎年誕生する恒星の平均数
B:そのうち惑星系を持つ恒星の割合(%)
C:そのなかで、生命の誕生に適した条件を持つ惑星の数
D:そこで生命が誕生し、複雑な生物への進化が起こる惑星の割合(%)
E:そのなかで、知的生物のが誕生し、高度に発達した文明を形成する確率(%)
F:そのような文明が存続する平均寿命(年)
上の数値は、下に行けば行くほど不確定性が大きくなっていくのであるが、わかる範囲で推定していく。
(1)Aに関しては大体10個程度である。
(2)Bに関しては、観測的統計では10%であるが、実際にはもう少し多いと考えられる。
(3)CはHabitableZoneと呼ばれるところに惑星は存在しているかどうかであるが、これも10%以上であると考えられる。近似的にそして期待を込めてB×Cで0.1であるとしよう。
(4)次にDであるが、ノーベル生理学賞を受賞したド・デューブに言わせれば、”約40億年前の地球と似た物理条件さえそろえば、生命は必然的に発生する。”らしいので、ここは彼の顔を立てて、100%としよう。
(5)Eに至っては最早予測不可能と言いたくなるところであるが、私の個人的主観で言わせてもらうなら、100%であると思う。なぜなら、私は人類が特殊な例であるとは考えないからである。
最後の方にかなりの主観が入ったが、これらの値をいれて式を書き直すと、
N〜F
となる。つまり、銀河系には文明の寿命(年)ほどの文明が存在していることになる。ここでも人類を特別な存在と考えなければ、
銀河系には50個(人類が電波技術をもって50年くらい)程度の文明が存在するはずである。
この数は、楽観的に見積もった値であるが、銀河系に50個の文明があるのであれば、宇宙全体の文明の数は星の数ほどあるはずである。
文明の種類(カルダシェフの分類)
もうひとつ準備段階として付き合っていただきたい話題がある。文明はどの程度まで進化するのだろうか?文明をランク付けしてみよう。これは、ロシア(その頃はソ連)のKardashevによって定義された文明のタイプである。その文明の出せる最大有効等方出力(EIRPmax)によって分類される。
タイプT型文明:地球型惑星が浴びる太陽光とエネルギーに等しい出力の電波を発信できる→10^{16}W(ワット)
タイプU型文明:太陽のような恒星が放つエネルギーの総量に等しい出力の電波を発信できる→10^{27}W(ワット)
タイプV型文明:銀河全体が放つエネルギーの総量に等しい出力の電波を発信できる→10^{38}W(ワット)
ちなみに我々の文明は、プエルトリコにあるアレシボ天文台が電波望遠鏡が最も強力なアンテナで、細いビームであれば(がんばれば?)10^{14}W(ワット)級の電波を放出できると言われている。
つまり我々の文明は、タイプT型文明にもいたっていない文明である。強いて言えば、タイプ0.7型文明ってところであろう。
私の個人的意見では、タイプU型はともかくタイプV型は、ほとんど存在していないのではないかと思っている。もし、存在していれば、ワープなどの技術を獲得していても不思議ではなく、ある日突然便所のドアを開けたら、宇宙人がいたということにもなりかねない。うかうか便所にもいけない。。。はっきりいうとそういう文明がいると思うとちょっと怖いのである。
宇宙植民地
この話に関係することであるが、ディプラーの定理と言うものがある。これは二つの簡単な仮定から、銀河系に我々より進んだ文明が存在しないことを証明する。
(1)星間旅行は可能である。
(2)宇宙人は、地球に来ていない。
<仮定>
宇宙船の速度=光速の10%
ある恒星から次の植民星までの距離=10光年
入植から次の星への2次植民までの安定期間=400年
<結果>
宇宙植民の最前線の速度=毎年0.02光年
銀河の直径=10万光年
銀河系全体を植民するのに500万年しかかからない。
恐ろしい話である。500万年は長い気がするが、銀河系の年齢と比べると非常に短い年月である(0.05%)。つまり、地球に宇宙人がいないのは、進んだ文明が存在しないことを意味する。こういうと宇宙人はもう地球に来ているとかという人がいると思うが、たぶんX-Fileの見すぎでしょう。
第4の衝撃
”SETIが成功した時の科学的・文化的意義は計り知れない”ということはよく言われている。では、実際にその発見が人類にどのような影響を与え、どのような位置付けになるのかということについてはなかなか議論されていない。その影響が大きすぎて、実際にそれが起こってみないとどういうことになるのか予測できないというのが正直なところであろう。今まで人類は多くの画期的な発見をしてきた。天文学に関係あるものでいえば、ニュートンの万有引力、コペルニクスの地動説、アインシュタインの相対論、ハッブルの宇宙膨張などなど。SETIの成功はこれらの画期的進歩のどれに近いのだろうか?ここでは、敢えてSETIの成功がどのような位置付けになるかを議論していきたい。以下に書くことは、僕の個人的意見です。
ここで天文学には、全然関係のない人物に登場していただこうと思う。

誰だかわかりますか?知っている人は知っているでしょう。精神分析学の父ジークムント・フロイト博士です。僕は一時期彼の理論というか持論というかに興味を持っていました。彼は『精神分析の難解さのひとつの原因に就いて』でこう言っています。科学は、今まで”ある基準”に照らして3つの大きな衝撃を与えたと。
さてこれらの3つに共通するものはなんでしょう?たしかに、この3つの発見は科学史上で非常に画期的なそして重要な発見です。でも、ニュートンの万有引力やアインシュタインの相対論は入っていません。彼の答えはこうです。これは”科学が破壊した人類の自己愛”である。1によって人類は宇宙の中心という玉座を追われ、2によって神の子孫であるというという自信を無くし、3によって自己の完全支配という幻想も捨てた(ここまでは、京極夏彦の『狂骨の夢』にかいてあります。面白い推理小説ですよ。)。確かにアインシュタインの相対論は画期的で人類の常識を覆した。しかし、人類の自己愛を破壊することはなかった。僕としては、ここにハイゼンベルクの不確定性原理やゲーテルの不完全性原理を入れてもいいと思うけど。。。そう人類は科学によっていろいろなものを手に入れてきたけど、それと同時にいろいろなものを失ってきたのでしょう。でも、心配いりません。人類には最後で最高の自己愛が残されています。
我々は、唯一の知的生命体である。
少なくとも地球上では我々が一番賢い。我々は猿とは違う。チンパンジーの愛ちゃんになんか負けない。これこそが、人類最後で最高の自己愛でしょう。SETIの成功は、この自己愛を破壊することになるだろう。つまりSETIとは、精神分析学的に言うと(大げさかな)、
SETIは、第四の衝撃、つまり人類の自己愛の完全破壊を目指している。
という位置付けが可能なのではないだろうか?これらの衝撃に対する嫌悪感は誰にでも存在する。バチカンのガリレオに対する弾劾、一部アメリカ南部における学校授業でもの進化論の否定、フロイトに対する排斥運動(『精神分析の難解さのひとつの原因に就いて』という題名からもわかるでしょう)。SETIが成功した時も同じような困難が待ち受けているだろう。フロイトが笑いながら問い掛けている。。
あなたはそれでもSETIを行いますか?と。僕の答えは、もちろん”YES"だ。